(英エコノミスト誌 2022年7月30日・8月6日合併号)

米国では高騰してきたガソリン価格が低下傾向に転じた(写真はサンフランシスコとオークランドを結ぶベイブリッジを望むガソリンスタンド、7月20日撮影、写真:AP/アフロ)

豊かな国々の経済成長は鈍っているが、まだ止まってはいない。

 最近は猫も杓子も悲観論者だ。

 投資調査会社ロンバードのスティーブン・ブリッツ氏は7月14日、世界最大の経済大国である米国が年内にリセッション(景気後退)入りするとの見方を示した。

 その前日にはバンク・オブ・アメリカも同じ見通しを明らかにしていた。

 片やゴールドマン・サックスはユーロ圏について、今年第3四半期と同第4四半期の両方で国内総生産(GDP)が縮小すると予想している。

 米国のグーグル検索では「リセッション」の検索件数が過去最高水準に到達した。

 そして市場ではトレーダーが銅(工業の好調さのバロメーター)を売却する一方、米ドルを購入し(市場参加者が神経質になっているしるし)、2023年の利下げを相場に織り込みつつある。

不安の根っこは金融引き締め

 数多くの要因が重なって、有害な組み合わせが生まれた。

 まず、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、米国が景気を刺激した。ところが刺激策が過剰だった。

 消費者のモノに対する需要が旺盛になり、世界のサプライチェーン(供給網)に目詰まりが生じ、米国内のみならず米国外でもインフレを誘発することになった。

 中国がコロナの根絶を試み、こうした問題をさらに複雑にした。そしてロシアがウクライナに侵攻し、コモディティー(商品)価格を急騰させた。

 その結果生じたインフレに、世界の中央銀行のざっと5分の4が利上げで応じた。政策金利の引き上げ幅は平均1.5ポイントだ。