(英エコノミスト誌 2022年7月23日号)

トルコでは異常な経済政策にもかかわらず経済成長が続いているが・・・(写真はイスタンブール)

物価が跳ね上がることで、投資が阻害され、国民の大半が貧しくなる。

 果てしなく時間がかかった揚げ句、一晩しかかからなかった――。

 2002年に没した影響力のある経済学者ルディガー・ドーンブッシュは、金融危機の発生過程をこう描写した。

 同氏の説明によれば、好景気は合理的、あるいは可能だと思える期間よりはるかに長く続き、その終わりも驚くような速さでやってくる。

 持続不可能なものでも、思いのほか長く持続することがある。

 そのドーンブッシュでさえ、まだ生きていたら今日のトルコの様子を見て頭を抱えるかもしれない。

 この国は、型破りな金融政策の無謀な実験をもう何年間も続けている。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、高金利は物価上昇を鎮める策ではなく、物価上昇の原因だと信じている。

トルコが続けてきた無謀な実験

 2021年の年末、ほとんどの国が金利を上げたり上げる準備をしたりしていた時に、エルドアン氏はトルコの中央銀行に利下げを命じた。

 そんなことをすればどうなるか、エルドアン氏はともかく、大方の人は予想できた。物価は瞬く間に高騰し、インフレ率はほんの数カ月間で80%近くに到達した。

 驚くべきことに、トルコ経済はそれでもなんとか成長を続けている。

 昨年の実質国内総生産(GDP)成長率は11%だった。トルコの好況はいつまでも続くように見える。

 トルコの向こう見ずな実験を見ていると、高インフレは迷惑なことではあるものの対処は可能だと結論づけたくなる。

 その誘惑には駆られるが、それは誤りだ。