手に負えないインフレは数え切れないほどの害悪を引き起こすが、トルコでは特に3つの害が突出する。
想定期間の短縮、日々の意思決定に加わるプレッシャーの増大、そしてインフレの負担をそれに耐える余力が最も小さい層に負わせる、富の恣意的な再分配だ。
長期とは来月のこと
想定期間の短縮から見ていこう。
物価が安定している時には、平均的な物価水準が前年比でどう変化しているかに注意を払う必要がない。安定していれば、遠い将来の計画を立てることも可能になる。
ところが今のトルコでは、長期と言えば翌月のことだ。
高インフレは変動性が大きい。国内市場で活動する企業は(物価の影響を除いた)実質ベースでどれぐらいのリターンが得られるのか予測できなくなるため、生産能力の増強や新しいビジネスチャンスへの投資に及び腰になる。
投資ができなければ、企業の長期的な繁栄が損なわれる。
すぐに発生するコストもある。お金の価値がどんどん下がっていく時期には、サプライヤーは代金の支払いを何カ月も待てない。
その結果、企業同士の関係の土台になる非公式の信用供与や信頼が蝕まれていく。
歪む物価シグナル、意思決定に影響
ダメージは意思決定にも及ぶ。
価格とは、資源を最善の使途に振り分けてくれるシグナルでもあり、インフレになるとそのシグナルが歪む。
価格が上昇しても、それが特定の産業における需要や供給についての情報を含んだものなのか、通貨価値の下落の反映でしかないのか、区別できなくなるのだ。