(英エコノミスト誌 2022年7月9日号)
英国は危険な状態に陥っている。
ボリス・ジョンソン氏の政権がついに倒れた。
英国の首相はもう何カ月もの間、次から次へと明るみに出るスキャンダルを切り抜けてきた。自党の議員たちから取り返しがつかないほど拒絶された末に、ようやく政権が終わったことを受け入れた。
秋まで首相の座にとどまりたいとしているが、即刻官邸を去るべきだ。
ジョンソン氏の失脚の原因は本人の不誠実さにある。そのため、英国があるべき軌道に戻るためには首相をすげ替えるだけで十分だと考える向きもあるかもしれない。
そうであれば良いのだが、そうはいかない。
確かに現在の混乱については、ジョンソン氏が関与した形跡が至るところに見られるものの、問題の根はもっと深いところにある。
与党・保守党が毅然とした態度でその事実に向き合わない限り、英国が数多く抱える社会・経済上の困難は悪化するばかりだ。
最後の最後まで権力にしがみついた首相
最後の最後まで、ジョンソン氏は権力に懸命にしがみつき、自分は国民から直接負託を受けたのだと言い張った。
この主張はそもそもナンセンスだった。ジョンソン氏の首相としての正統性は議会に由来しているからだ。
米国のドナルド・トランプ前大統領のように、ジョンソン氏はしがみつけばしがみつくほど、首相としての資質を失っていった。
首相在任中と同様、去り際においても、自分の党と国家の利益に対する目に余る無関心ぶりを露呈した。
最後の詰めに2日近い苦しい時間を要したが、7月5日に2人の閣僚が辞任を申し出たことがとどめの一撃になった。
きっかけは、酒に酔った末に2人の男性に痴漢行為を働いたと訴えられている保守党院内副幹事長の振る舞いだった。