(英エコノミスト誌 2022年6月18日号)
エルドアン大統領率いるトルコ政府は同盟の問題児だ。
定説では、ロシアによるウクライナ侵攻は北大西洋条約機構(NATO)に新たな命を、そして新たな使命感、緊張感、一体感を吹き込んだ。
誰かがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に伝えるのを忘れた。
大統領はこの1カ月で、NATOの拡大を妨げ、シリアで米国の支援を受けているクルド人戦士らに新たな攻撃を仕掛けると警告し、同じNATO加盟国であるギリシャとの緊張を高めた。
西側のみならずトルコ国内でも、一握りの識者が今再び、NATOとトルコは袂を分かつべきか否かを議論している。今回は、同調者がほかにもいる。
「代案の一つとしてNATO脱退も議題にするべきだ」
エルドアン氏の連立政権に参加している民族主義政党のリーダー、デヴレト・バフチェリ氏は先日こう発言した。
「我が国はNATOのおかげで存在したわけではない。NATOがなくても滅んだりしない」
ロシアと西側を両天秤
西側諸国の首都やキーウ(キエフ)の政府当局者は、トルコがロシアに配慮する姿勢に対しても苛立ちを募らせている。
多くの人が、ウクライナでの戦争を受け、エルドアン氏がウラジーミル・プーチン大統領との友好関係を再考せざるを得なくなると考えていた。
実際にはそうならず、ご都合主義がまかり通っている。
トルコはウクライナに武装ドローンを売却し、ロシアの軍艦が黒海に入る海路を封鎖したが、西側諸国による対ロシア制裁には反対し、ロシア資本をおおっぴらに招き入れている。
トルコメディアのある報道によれば、国営ガスプロムをはじめとしたロシア企業数十社が欧州本社をトルコに移すことを計画している。
ウクライナで戦争が始まった当初に非難の声を少し上げたことを除けば、トルコは一貫してロシアと良好な関係を保っている。