(英エコノミスト誌 2022年6月11日号)

かろうじて信任されたボリス・ジョンソン首相(6月7日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

英国は経済の衰退を阻止しなければならない。

 英保守党の下院議員は6月6日の投票でボリス・ジョンソン首相を何とか信任したが、生ぬるい支持は英国の与党が根本的に難しい選択に向き合えないことを露呈した。

 ジョンソン氏が党首信任投票で敗北していれば、新政権が誕生し、保守党は次の選挙の前に自らの力量を示す機会を得ることになった。

 逆に完全に勝利していれば、ジョンソン氏はルール違反の過去と決別したことを示す新たな負託を手にしていた。

 しかし、党内の反対勢力が放ったためらいがちな一撃のおかげで、英国の運命は、実行できない約束ばかりしているくたびれた内閣の手中に委ねられた。

偽善や欺瞞では語れない英国の病

 本誌エコノミストはかねて、ジョンソン氏は自ら定めた法律を破ったか否かについて議会に繰り返し嘘をついたことで辞任しているべきだったと主張してきた。

 だが、ジョンソン氏と英国が直面している大きな問題は、偽善や欺瞞だけではとてもとらえられない。

 英国はもう15年間も停滞している。活力に富んだ自由市場の国だと思いたがっているが、英国経済はほかの先進国の大半に後れをとっている。

 経済成長をめぐる長い議論や景気を浮揚させるアイデアには事欠かない。

 だが、改革に必要な気概と戦略的思考がない。これもまた、保守党が難しい選択を避けている例の一つだ。

 英国の停滞は、多くが欧州に集中するほかの低成長国の教訓にもなる。

 国内総生産(GDP)が少なくなることは、世界における自国の影響力が低下し、自由市場に対する信用が低下し、公的サービスに投じられる資金が減ることを意味する。

 増えなくなった財源をめぐる争いは、政治というものをアイデンティティーをめぐる醜い争いに変えてしまうポピュリズムの台頭を招く。

 投資資金が不足すれば、疲弊して非効率な制度が定着する。そして何より、経済が成長しなければ英国の繁栄の余地も限られてしまう。