(英エコノミスト誌 2022年5月28日号)

ロックダウンの影響で人出がほとんどなくなった上海の商業地域(5月26日、写真:ロイター/アフロ)

柔軟性に欠ける政治が実利より優先されている。

 中国はこの20年間、世界経済にとって最大かつ最も頼りになる経済成長の源泉だった。

 この間の世界全体の国内総生産(GDP)成長の4分1をもたらし、80四半期中79四半期でプラス成長を遂げた。

 毛沢東の死後に国を開いてからほぼずっと、中国共産党は国を富ませるにあたって実利的なアプローチを取り、市場改革と国家管理を組み合わせてきた。

 しかし今、中国経済が危険な状態にある。

 喫緊の問題は「ゼロコロナ」キャンペーンだ。この政策は景気の不振を引き起こし、経済活動の停止と再開を繰り返すパターンに追いやってしまう恐れがある。

 これが、もっと大きな問題をこじらせている。国家資本主義を作り替えようとする習近平国家主席のイデオロギー闘争がそれだ。

 今の路線を継続すれば、中国の経済成長は鈍化し、予測可能性が低下し、中国と世界に大きな影響をもたらすことになる。

共産党大会を前にぐらつく中国経済

 上海のロックダウン(都市封鎖)は導入から2カ月近くを経て緩和されつつあるが、中国はゼロコロナにはほど遠い状況にあり、北京や天津で新たな感染拡大が生じている。

 2億人を超える国民が制限を加えられた生活を送り、景気がぐらついている。

 4月の小売売上高は前年同月比で11%減少し、ケンタッキーフライドチキン(KFC)や自動車、カルティエの宝飾品などの購入も低調だ。

 勤務先の工場に泊まり込んで働いている労働者もいるのに、工業生産や輸出数量は落ち込んでいる。

 2022年通期の経済成長率は、米国のそれを大幅には上回らないかもしれない。もしそうなれば、天安門広場での虐殺で経済制裁を受けた1990年以来の出来事になる。

 習氏にとっては最悪のタイミングだ。習氏は今年秋の第20回中国共産党大会で、2期10年で交代という近年の慣例を破って3期目続投の承認を得るつもりでいるからだ。