(英エコノミスト誌 2022年5月14日号)

ウクライナは世界有数の小麦の産地でもある

海路で輸出できないことが大打撃となっている。

 侵略の真っただ中で経済の運営を試みている人物にしては、セルヒ・マルチェンコ氏は奇妙なほどに楽観的だ。

 ロシアはウクライナの主要な港を占領または封鎖し、ほとんどの企業を閉鎖に追い込んだかもしれないが、ウクライナ財務相はあくまで冷静だ。

「状況は非常に厳しい。軽くみるつもりはない」

 自分の役所の近くにあるしゃれたカフェで、マルチェンコ氏はラテを飲みながらこう言った。

「だが、対処できる」

 インタビューの最中に空襲警報が鳴り響いても、マルチェンコ氏は意に介さなかった。

健全な状態で戦争に突入したが・・・

 パニックにならない理由はたくさんある。ウクライナは良好な状態で戦争に突入した。経済成長率は前期比年率でほぼ7%に達し、輸出品である穀物、鉄鋼には高値がついていた。

 銀行業界はきちんと規制され、政府の財政赤字は昨年、国内総生産(GDP)比3%にも満たなかった。

 政府の債務はGDP比50%弱で、多くの財務相にとっては夢でしかない低水準だった。

 徴税や給付金支給のシステムは見事にデジタル化されており、ウクライナ経済のうちまだ機能している部分から税収がスムーズに得られている。

 年金と公務員給与は今でも、そしてロシアに占領されてしまった地域においても、全額支払われている。

 頑健なデジタルシステムと、驚くほど痛手を受けていないインターネットのおかげだ。

 今のところ、ほとんどの企業は従業員に給料を払っている。業務が通常通りに、あるいは全く行えていない場合でもそうだ。

 財務相によれば、給与税の収入は1%しか減っていない。