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(英エコノミスト誌 2022年4月30日号)
ウラジーミル・プーチンはロシアの弱さを埋め合わせるために戦闘を利用している。だからこそこの人物は危険なのだ。
現代のロシア軍の力は、ウラジーミル・プーチン大統領がソビエト連邦崩壊の屈辱の後にこの国を偉大な存在に蘇らせたことを世界に見せつけるはずだった。
ところが、ウクライナでは思うような進捗が見られないうえに多大な損害を被り、むしろロシア内部の深刻な欠陥を露呈させた。
プーチン氏の攻撃に怯える人々にとっては、弱体化した軍隊は安心材料だ。残念ながら、真価を証明しなければならないと考える核武装した大国が後に残ることにもなる。
これまでのところ、ウクライナ侵攻はロシア軍にとって惨憺たる結果になっている。
英国政府によれば、この2カ月間で約1万5000人のロシア兵が死亡した。
少なくとも1600両の武装車両が破壊されており、数十機の航空機や黒海艦隊の旗艦も失われた。首都キーウ(キエフ)への攻撃も無惨な失敗に終わっている。
レオン(レフ)・トロツキーは「軍隊は社会の写し絵であり、社会のあらゆる病に苦しめられ、大抵は社会よりも高い熱を発している」と書いた。
ウクライナの東部と南部における今後数週間の戦闘は、この戦争の帰趨を決めるだけでなく、ロシア軍が自らの評価を――そして、軍が体現しているロシア社会の評判を――どの程度回復できるかをも決めることになる。
ウクライナで露呈した軍の腐敗
本誌エコノミスト今週号の特集記事では、ロシア軍がいかに腐敗しているかを紹介している。
ロシアの国防予算は購買力平価ベースで2500億ドルを超えており、英国やフランスの約3倍に上るが、その大部分が浪費されたり盗まれたりしている。
プーチン氏と軍の最高司令官らが侵攻計画を上級将校らに伝えていなかったことは、深刻な信頼の欠如を反映している。
賞味期限切れの食料を配られている兵士たちは愛想を尽かし、軍用車両を乗り捨てた。拷問、レイプ、殺人などの罪を犯した部隊がクレムリンに表彰された。