ロシアは制空権を確保したり、空軍力を陸上の戦車、大砲、歩兵などの火力と統合したりすることもできていない。
汚職にまみれ、自発性を促したり過ちから学んだりすることができない将軍たちは苛立ち、最新の軍事の教義を捨て、市街地を徹底的に破壊したり一般市民にテロを仕掛けたりする戦術に頼るようになった。
士気の高いウクライナ側の軍隊は、こうしたロシア側の短所に対する戒めとなっている。
人数と装備で劣るにもかかわらず、順応性があって分刻みの最新情報を手にしている現場の小部隊に意志決定の権限を委譲することによって侵略軍に抵抗した。
ここへ来て1人の司令官の指揮下に入ったロシア軍の作戦行動が東部ドンバス地方で成果を上げるとしても、それは主に圧倒的な物量で手にした勝利になる。
ロシア軍は洗練された現代の軍隊だという主張には、ウクライナの平原にうち捨てられ、さび付く戦車の砲塔と同程度の説得力しかない。
超大国になりたい中堅国
プーチン氏にとって、これは痛恨の後退だ。
部分的には、プーチン氏が自分への批判をかき消すのに役立つ強力なプロパガンダ(宣伝工作)マシンを支配しているものの、メンツを潰されればロシア国内での立場が危うくなるからだ。
それ以上に大きいのは、ロシアを無視できない国にするプーチン氏の戦略にとって軍事力の行使が要になっているからだ。
ロシアの国土は広いかもしれないが、国はいまだに超大国になることを切望する中規模の国体だ。
人口はバングラデシュとメキシコの間に位置し、経済規模ではブラジルと韓国の間に位置する。世界の輸出に占めるシェアは台湾とスイスの間だ。
南アフリカ共和国やインドなど非同盟諸国からはいくらか共感を得ているものの、ソフトパワーは衰えており、ウクライナで露呈した能力のなさと残虐性がそれに拍車をかけている。