(英エコノミスト誌 2022年5月28日号)
良識と低税率がアルプスの山国を企業の安息地にしている。
政治、ビジネス、学術、メディア、そして芸術の各分野の有力者たちが5月22日、スイスのダボスに降り立った。
2年数カ月ぶりに対面形式で開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会に出席するためだ。
半世紀以上にわたり、世界中の大物が年次総会の場を借り、世界の喫緊の課題について意見を交わしてきた。彼らにとって、スイスは気が休まる場所だ。
この山あいの小さな村が議論の場として実力以上の影響力を発揮するように、スイスもまた、天然資源がほとんどない内陸の小国に期待される域をはるかに超え、企業の安息地として繁栄してきたからだ。
欧州企業の市場時価総額ランキング最上位100社のうち13社、そして世界の大企業500社のうち12社がスイスに本社を構えている。
スイスに成功をもたらしている「秘伝のソース」は一体何なのだろうか。
世界に名だたる企業が集中
山と谷からなり、世界有数の企業群の本拠地になる前はヨーデルの歌唱法の発明を功績の一つに数えていた国で、何かすごいことが起きているに違いない。
国内総生産(GDP)比で見る限り、スイスはフォーチュン500社の比重が世界で最も大きな国だ(図1参照)。
多国籍企業がGDPのおよそ3分の1を稼ぎ出しており、似たような規模の国々よりかなり高い。外国企業はスイスに引き寄せられている。
例えばグーグルは、米国外では同社最大のエンジニアリングセンターをチューリッヒに設けた。
スイスの優良企業の株価は欧州のライバルのそれをアウトパフォームしている。
過去5年間でスイス株価指数が29%上昇したのに対し、主にフランスとドイツの巨大企業で構成されているユーロストックス50指数の上昇率は3%にすぎない。
スイス企業の名前は遠く離れた外国でも認知されている。