(英エコノミスト誌 2022年6月24日号)
食料・エネルギー価格の高騰がすでにある不平不満に追い打ちをかけている。
人はパンのみにて生くるものにあらず、とイエスは言った。とはいえ、パンが不足すれば人は怒り出す。
今日のような食料価格ショックに世界が前回苦しんだ時には、ほかの要因も相まって「アラブの春」と呼ばれる反乱の波が沸き起こり、4人の大統領がその座を追われ、シリアとリビアで身の毛もよだつような内戦が始まるに至った。
不幸なことに、ウラジーミル・プーチンによるウクライナ侵攻のせいで、穀物とエネルギーの市場が再び大騒ぎになっている。
このため、今年は騒乱の発生も避けられない。
生活を直撃するインフレ
食料とエネルギーの価格高騰は、インフレの最も耐えがたい形態だ。
家具やスマートフォンが値上がりすれば、購入を延期したり、なしで済ませたりすることができる。だが、人は食べるのをやめることはできない。
同様に、輸送コストはあらゆる物品の価格に織り込まれており、職場に歩いて通うのは容易でない人が大半だ。
従って、食料と燃料の価格が高騰すれば大抵、生活水準が急低下する。
最も強い痛みを被るのは貧しい国の都市住民だ。所得の大きな部分がパンとバスの運賃に消えていくからだ。
彼らは農村部の住民とは違い、自分で食べる作物を育てることはできない。だが、暴動を起こすことはできる。
多くの国の政府がこの痛みを緩和したいと思っているが、コロナ禍の後、多額の債務を抱え、手元資金が不足している。
貧しい国々の公的債務残高の国内総生産(GDP)比は平均で70%近くに達しており、今もなお上昇している。