(英エコノミスト誌 2022年7月2日号)
たとえドナルド・トランプが去っても米共和党の改革は不可能かもしれない――。まもなく退任する本稿コラムニストはそう見ている。
2021年1月6日の米連邦議会襲撃事件を調査している下院特別委員会で6月28日に行われたキャシディ・ハッチンソン氏の証言で、米国民はショッキングなことを知らされた。
だが、それはドナルド・トランプ氏に関することではない。
第45代米国大統領が腐敗した邪悪な人物であることは、2016年に同氏が共和党大統領候補の指名を獲得する前から明らかだった。
ホワイトハウス高官の側近だった26歳のハッチンソン氏が襲撃事件の前やその最中の出来事について語った証言について衝撃的だったのは、「トランプワールド」にこれほどどっぷり浸かっていた人物が、あえて証言に立つ倫理的指針を持っていたことだ。
1月6日にホワイトハウスで起きていたこと
ハッチンソン氏は事務的な口調で、トランプ氏が「MAGA(米国を再び偉大にする)」のスローガンを掲げる群衆が銃を所持していることを知らされ、そのまま持たせておくよう示唆した会話を耳にしたと証言した。
それはトランプ氏が群衆に向かって、議会議事堂に行って「死に物狂いで戦え」と命じる前のことだった。
ハッチンソン氏はまた、トランプ氏が暴徒を議会に誘導しようとした後、シークレットサービスが同氏を制止しなければならなかったと聞いたと証言した。
ハッチンソン氏ほど大統領の近くにいた人物が、これほど強烈な形で袂を分かったのは初めてだ。
同氏の証言で明らかになったように、トランプ氏の取り巻きや政権幹部が、トランプ氏が何を企んでいるかを完璧に把握していたにもかかわらず、だ。
ハッチンソン氏によれば、上司だったマーク・メドウズ大統領首席補佐官は「1月6日は本当に、本当にひどいことになるかもしれない」と漏らしていた。
同氏はまた、議会に向かって行進するトランプ氏の計画について、ホワイトハウス法律顧問のパット・シポローネ氏が思いとどまるよう助言した場面を描写した。
「そんな行動に出れば、考えられるありとあらゆる罪で起訴される」というのがその理由だった。
この2人は今のところ、委員会での証言を拒んでいる。