(英エコノミスト誌 2022年7月9日号)

一面雪化粧した首都ワシントン。11月の中間選挙の時にはどのような姿を見せるのか

ドナルド・トランプに刺激を受けた運動が首都ワシントンに根を張っている。

 コーヒーが用意された立派な会議室に、IDカードホルダーを首からぶら下げたダークスーツ姿の男たちが集まっている。米国の首都ワシントンではありふれた光景だ。

「支配階級の嘘」と書かれた入り口の看板だけが、メイフラワー・ホテルで開かれているこのイベントを少々珍しいものにしている。

 イベントの主催者は、クレアモント研究所が1年前に立ち上げた「米国的生活様式センター(CAWL)」だ。

「米国のエリートたちは頭脳明晰ではなく、能力もなければ、資質もない」

 この日の最初のセッションで、ドナルド・トランプ前大統領の国家安全保障関連の側近だったマイケル・アントン氏はこう述べた。

 経済ナショナリズムと抑制的な外交政策、そして移民受け入れの制限を支持することで団結している聴衆はナショナル・コンサーバティブ(国家保守主義者)を自称し、その多くは、左派が米国の存在を揺るがす「脅威」をもたらしていると見ている。

 しかし、その表情は自信に満ちあふれている。

シンクタンクや支援団体を続々設立

 共和党が連邦議会の上下両院とはいかないまでも、片方を奪回することを見込んでいる11月が訪れれば、国家保守主義者たちは、まだ生まれて間もない自分たちの運動のエネルギーを、その権力の一部に結びつけたいと思っている。

 トランプ氏の大統領選挙勝利に沸き立ったものの、同氏がその型破りな直観を実行に移せなかったことに失望した国家保守主義者たちは、保守の新しいエリート層と政策議題を形成することに全力を注いでいる。

 同様な思想を持つ政策マニアやトランプ政権の元高官たちは、シンクタンクや支援団体の設立に忙しい。

 新しい共和党右派に政策原案を、そして何よりも人材を供給できるようにするためだ。

 保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)に籍を置き、米国右派の歴史を本にまとめた学者のマシュー・コンティネッティ氏は、保守派は以前から「選ばれた高官たちが権限のある地位に就いた時に実行に移せるコンセプト、戦略、政策の策定」をそのような組織に頼ってきたと指摘する。