(英エコノミスト誌 2022年7月30日・8月6日合併号)
経済を立て直すためには、長期に及ぶ改革と国民のさらなる困窮が必要になる。
7月21日の夜、スリランカの最大都市コロンボの海に面した大統領府には安堵感が広がっていた。
9日にデモ隊が占拠し、寄贈された本を並べて図書室に変えていた正面玄関の広間では、一握りの抗議者がぶらぶらしている。
ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領を追い出し、失脚させることに成功したから、大統領府を翌日国に返すと話していた。
新政権は違うことを考えていた。
そのほんの数時間後の22日未明、暴動鎮圧用の装備に身を固めた警察官や兵士の一群が大統領府に残っていたデモ参加者たちの排除に乗り出した。
屋外に設けられていたテントを倒し、金属製のバリケードを築き、数人を逮捕した。病院に運ばれるほどの大けがをしたデモ参加者も2、3人いた。
新大統領の困難な船出
この強制排除はラニル・ウィクラマシンハ新大統領にとって不幸なスタートとなった。
同氏はラジャパクサ氏が国外に脱出した1週間後に、議会によって大統領に選ばれた(ラジャパクサ氏は国を出た翌日に大統領を辞任した)。
人気はすでに芳しくない。スリランカ国民の多くは、ここ数カ月、前大統領への協力を厭わなかったウィクラマシンハ氏の姿勢に不満を抱いていた。
なるほど今年5月には、ラジャパクサ氏の辞任が保証されないのなら引き受けないと明言した野党のリーダーに代わって、首相に就任していた。
抗議行動を力で押さえつけていては、一般国民の間に友好的な態度を醸成することなどできそうにない。
しかし、そうした友好的な態度こそ、ウィクラマシンハ氏が今後数カ月間に必要とするものだ。
同氏の政権がスリランカを経済的安定に似た状態に戻すためには、国民に痛みを負わせなければならず、国民の側に友好的な態度が生まれなければ、政権は持ちこたえられそうにないからだ。