(英エコノミスト誌 2022年7月23日号)

アレクサンドルポリス(ウィキペディアより)

米国の軍艦がここに寄港する。そしてロシアとつながりのある企業が買収を目指している。

 トルコとの国境まで15キロのところにあるギリシャの小都市アレクサンドルポリスで今夏、卵と鶏肉が一時的に品切れになった。

 米軍の揚陸艦「アーリントン」でやってきた海兵隊員たちが3日間、腹を空かせて市街にどっと繰り出したためだ。

 アレクサンドルポリスは最近、にわか景気の様相を呈している。

 今まではトルコやバルカン諸国からの観光客にコーヒーやケーキ、土産物を売ることに頼っていたが、もうその必要はない。

 これについてはウラジーミル・プーチンのウクライナ侵攻に感謝するといい。戦争のおかげで港の活動が爆発的に増えたからだ。

 この港が北大西洋条約機構(NATO)の兵站計画立案者の目に魅力的に映るのは、地理的な理由による。

 まず、エーゲ海に面しており、NATOの東端の国々を南北に通る鉄路や道路が充実している。

 特に重要なのは、ブルガリアとルーマニアを通ってウクライナにアクセスできることだ。

 この港を中継地点として使えば、ロシアが目を光らせる黒海や、NATO加盟国ではあるが気まぐれなトルコの支配下にある要所ボスポラス海峡を通らずに済む。