米国と中国はともに、債務再編が相手を利するのではないかと疑心暗鬼になっている。
パリクラブは中国に対し、融資の透明性を高めたり、実質的な政府融資として扱う銀行融資の額をもっと増やしたりするよう求めている。
片や中国は、国際機関や西側の商業銀行の債権のヘアカット率(元本削減の割合)をもっと高くするよう要求している。
この案件がほかの融資先との交渉の先例になることを、そして国民の怒りを買うことを恐れているのだ。
「中国のおカネは天から降ってきたものではない。中国の国民が懸命に働いて稼いだカネだ」
SIISの劉宗義氏は8月15日、中国のナショナリストのニュースサイトでこう述べた。
習近平主席のビジョンに暗雲
ザンビアの交渉で見られた遅延を避けるためには、スリランカは中国と債務再編の協議を早い段階で、それもパリクラブよりも先に始めるべきだと促す向きもある。
IMFもそのような協議を求めているが、十分な権限を持つ高官同士の協議が始まったか否かは明らかでない。
ザンビアは「警告であり教訓である」。
かつて世界銀行の職員としてスリランカにアドバイスしていたシャンタ・デバラジャン氏はこう語る。
「私たちはいまだに同じ原則を適用して債権者間の公平を達成しようとしている。だが、それを議論する順番が重要なのかもしれない」
同氏は年末までにIMFの救済が決まると見ている。ほかの識者はもっと時間がかかると考えている。
IMFは、8月24~31日の日程でスタッフがスリランカを訪問し、次のステップ――救済についての事務レベルでの合意――に進むのに必要な改革について議論していると述べている。
だが、それと同時に、救済の最終承認には債務の持続可能性回復に関する債権者からの「適切な保証」が必要になるとも強調した。
事務レベルの合意であっても、痛みを伴う改革が求められることになる。
例えば投資家向けの税控除の廃止など、コロンボ・ポート・シティのプロジェクトの計画修正も求められるかもしれない。
もしそうなれば、海上シルクロードのメトロポリス建設という習近平氏のビジョンが損なわれかねない。
だが、スリランカにとっては、そして巨額の債務を抱えたほかの数十カ国にとっては、そうなった方が希望が持てるのではないだろうか。