スリランカにとって当面の望みは、ザンビアへの支援が先例となって中国がほかの債権国と協調するようになることだ。
スリランカは中所得国であり「共通枠組み」の対象から外れているにもかかわらず、だ。
スリランカのラニル・ウィクラマシンハ新大統領は本誌エコノミストの取材で詳細を語ることを拒んだものの、交渉がまとまることに自信を持っているようだった。
議論されている案のなかには、スリランカにとって二国間政府融資の最大の債権者である中国が債権者委員会の議長を日本と共同で務めるというものがある。
2番目に大きな債権を持つ日本はパリクラブのメンバーだ。
また、委員会にはインドも加入する可能性がある。あるアドバイザーに言わせれば、その狙いは、スリランカを共通枠組みの「アドホックな」案件として扱うことだ。
地政学的な背景の変化
しかし、ザンビアの場合に比べるとスリランカの地政学的な背景は複雑だ。
中国と日本、中国とインドとの関係はいずれも冷え込んでいる。
中国は8月、台湾周辺で軍事演習を行った際に日本の近くの海域でミサイルを発射しているし、インドとは2020年以降、係争中の国境地域で部隊が何度か衝突している。
また米国は、中国が「債務の罠外交」を進めていると非難し続けており、スリランカを証拠に挙げている。
中国はこれを否定し、スリランカを含む発展途上国のほとんどは多国間の融資機関や民間債権者からの借入額の方が大きいと反論している(この反論は正しい)。
また、アフリカ諸国への無利子融資23件の返済を免除することを8月18日に約束したことなどに言及し、二国間の債務支援も行っていると述べている。
(免除した債務の規模は明らかにしていないが、中国による無利子融資は少額であるのが普通だ)
ザンビアの交渉はいろいろな問題のためにまとまるのが遅れたが、その多くはスリランカの前にも立ちはだかっている。