(英エコノミスト誌 2022年8月20日号)
もし出馬した場合、共和党員はトランプ氏を党の候補者に指名するのか?
以下の問いが米国を、ひいては西側諸国を悩ませている。
2020年の米大統領選挙の結果を覆すことを試み、世界最強の軍事同盟を解体するぞと脅し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と密かに結託していた人物は果たして再出馬の意向を固めるのか。もし出馬を決めたら、誰かが止めることができるのか――。
そんな話はまだ早いと思われるかもしれない。だが、2024年の大統領選挙に向けた予備選挙の開始までに残された時間は、前回選挙から経過した時間(94週間)よりも短い。
また、大統領としての実績のお粗末さや、米国の有権者に続投を阻まれた後の恥知らずな言動にもかかわらず、トランプ氏による米共和党の支配は強まっている。
誰が一番「MAGA」かの勝負
8月半ばのワイオミング州共和党予備選挙で現職のリズ・チェイニー氏が大敗したことの意味は重い。
なぜなら、勇敢で信念を持った保守派議員の1人が連邦議会に戻れなくなるからであり、この展開が1つのパターンに当てはまっているからだ。
トランプ氏の支援を受けた候補者全員が予備選挙を勝ち抜いたわけではない。だが、大半は勝利を収めている。
トランプ氏の影響力がそれ以上にはっきり表れているのは、予備選で負けた多くの候補も同氏のお墨付きを求めたことかもしれない。
共和党の予備選は保守主義の色合いをめぐる選挙にはなっておらず、誰が最もMAGA(米国を再び偉大にする運動)に熱心かを競うものになっているのだ。
トランプ氏が2021年1月6日(米連邦議会襲撃事件が起きた日)に取った行動をめぐる弾劾裁判の開廷に賛成した共和党下院議員10人のうち、8人は次の選挙には臨まず引退すると自分で決めたか、予備選挙の投票者によって引退を言い渡された。
おまけに一部の州では、2020年の大統領選挙は盗まれたというトランプ氏の危険な主張を支持する人が、選挙管理組織の幹部職の共和党指名候補になっている。