中国は自国が優先されることを望み、債務救済交渉は二国間で行うことを好む。融資契約には、そのような趣旨の条項が盛り込まれているケースが多い。

 加えて、パリクラブの基準を受け入れることは、中国の開発金融の方が西側のそれより優れているという習氏の主張に傷を付けることにもなる。

中国の姿勢に変化の兆し

 だが、2020年以前に多くの貧しい国々が直面していた債務問題が新型コロナウイルスの感染拡大やインフレ高進、ウクライナでの戦争によって悪化するにつれ、中国が嫌々ながらもその姿勢を少しずつ調整する兆しが見える。

 中国を含む20カ国・地域(G20)は2020年5月、「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)」を立ち上げた。

 世界で最も貧しい73カ国については、要請すれば二国間政府債務の元利返済が一時的に猶予される仕組みだ。

 中国は2020年の後半に、DSSI要請国からの返済を少なくとも21億ドル猶予したと述べていた。

 中国は2020年11月、貧しい国々の債務の取り扱いでG20とパリクラブが協力する「共通枠組み」合意も支持した。

 2022年7月に、この枠組みによる最初の交渉がまとまった。

 数カ月間に及ぶ白熱したやりとりの末に債権国がザンビアに救済措置を講じることで合意し、IMFからの14億ドルの支援が実行されることになった(ただし、詳細はまだ決まっていない)。

 ザンビアにとって最大の債権国である中国は当初、ほかの債権者との連携を拒んでいたが、今年5月になって債権者委員会の共同議長をフランスとともに務めることに同意した。

 両国はエチオピアの債権者委員会でも共同議長を務めている。

 中国が姿勢を変えた理由は、問題の規模が大きいことや、中国の融資に対する国際社会の目が厳しくなってきたことなどに求められそうだ。

 中国のデータは透明性が低いものの、DSSIを要請できる68カ国の債務の統計を世界銀行が提供している。

 この68カ国のうち約60%は、ディストレスに陥るリスクが高いか、すでに陥っている。