英国ではゼロエミッション車(ZEV)義務化で、24年以降、自動車メーカーはZEVの販売台数を「証書」に換算し、毎年末に総販売台数の一定数の「証書」を保有することが義務付けられる。二酸化炭素(CO2)排出削減目標も設定され、達成できない自動車メーカーには数百万ポンドの罰金が科せられる可能性がある。メーカー間で「証書」を売買できる仕組みだ。
「ハイブリッド車の新車販売を早期に終了させれば多くの分野に影響する」
デーリー・テレグラフ紙によると、トヨタは英政府の諮問に「政府が30年にハイブリッド車とプラグインハイブリッド車の新車販売を早期に終了させる(厳格なゼロエミッション性能を求める)要件を採用した場合、多くの分野に影響を及ぼす」と回答。トヨタは生産・販売・その他事業や将来の投資、50年ネットゼロ達成にも影響が出ると伝えたという。
英国が、欧州の単一市場・関税同盟と決別し、ヒト・モノ・カネ・サービスの流れを停滞させることが分かっている「EU離脱」を選択したのは、自己決定権をブリュッセルから取り戻し、国内製造業を回復させることが狙いだった。しかし、経済にいいわけがない。製造業のサプライチェーンは分断され、物流は滞る。国際通貨基金(IMF)は来年、英国の経済成長は主要先進国の中で最も低い0.5%に落ち込むと予測する。
EU離脱前は年間生産台数200万台の復活を目指していた英自動車産業だが、ディーゼル車不正、権威主義国家の中露と西側の対立激化によるグローバル化の反転、半導体など主要部品の不足、ウクライナ戦争、温暖化対策の電動化で年間76万3783台に激減した。今年上半期の生産台数も昨年同期比で19.2%(9万5792台)減となっている。
トヨタは1992年に英国で生産を始め、中部ダービーシャー州バーナストンに車両製造工場、ウェールズ北部ディーサイドにエンジン製造工場を持つ。直近のカローラ生産への2億4000万ポンド(約390億円)投資を含む総額27.5億ポンド(約4400億円)以上を投じ、これまでに400万台以上を出荷してきた。従業員数は3000人以上を数える。