(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)
[ロンドン発]「英国に進出する日系自動車メーカー、トヨタ自動車が英政府に対しハイブリッド車を禁止したら英国での生産を停止する恐れがあると警告した」と英与党・保守党寄りの高級紙デーリー・テレグラフ(電子版、7月30日)が報じた。記事のトーンはトヨタに批判的だが、英国の欧州連合(EU)離脱を契機にホンダが昨年7月に英国工場での生産を終了しているだけに、英国に衝撃が走ったのも事実。
「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出量を全体でゼロにする)」を目指す英政府は、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに段階的に禁止する。一方、かなりの距離をゼロエミッションで走行できるフルハイブリッド車(エンジンや電気モータがそれぞれ単体でクルマを稼働させるタイプ)やプラグインハイブリッド車については35年まで新車販売を認められる。
問題はそのハイブリッド車の扱いだ。
カローラハイブリッドは2030年以降も英国で販売できるのか
ゼロエミッションでの走行距離など詳細は年末までに決定される。つまり、ハイブリッド車であっても、35年まで新車販売が認められるのはごく一部と見られている。トヨタが英国で生産するカローラはフルハイブリッド車のみなのだが、これが30年には新車販売ができなくなる恐れがあるということだ。そうなれば英国工場で生産を続けるのは非常に難しい。
一方、自動車大国ドイツが大きな影響力を持つEUでは、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売も35年まで認められているため、トヨタは英国で生産したカローラの新車販売を継続できるよう同国でロビー活動を展開している。
1997年のプリウス発売でハイブリッド車の先駆者となったトヨタは他の自動車メーカーと比較して電気自動車(EV)への移行が遅れていると環境団体に批判されてきた。デーリー・テレグラフ紙のトヨタ批判報道も同じ延長線上にある。