絵画と宗教は切っても切れない関係がある。どのような教えを中世宗教画が伝えてきたのか読み取ると、ユダヤと中東問題、イスラム教とユダヤ教の関係、その両方に深くかかわるキリスト教など、今につながるものが浮き彫りになる。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』やミレーの『落穂拾い』など、有名絵画に隠された秘密とは。
※石角完爾『西洋絵画に隠されたユダヤの秘密』(笠間書院)から抜粋、一部編集した。
【1回目から読む】神とすら戦うユダヤ人が富のために生み出したものとは?絵画から学べなかった日本人と富を得たユダヤ人の差
(石角 完爾:国際弁護士)
神の火焔放射による焼却から学んだこと
ソドムとゴモラの街が、天空からの火柱で破壊される絵──。これはジョン・マーティン(John Martin)が1852年に描いた油絵であり、現在はイギリスのニューカッスル・アポン・タインのレイング・アート・ギャラリー(Laing Art Gallery)に展示されている。
この絵の右側に描かれている2人は、神の火炎放射による焼却から逃れるロトとその妻である。神が遣わした天使から「逃げる時に決して後ろを見てはいけない」と言われていたのに、妻の方はどうしても後ろが気がかりで見てしまい、一瞬のうちに塩の柱に変わってしまった。
ギャラリーの来場者の多くは、こういう説明を聞かされたに違いない。しかし、我々ユダヤ人はこの絵からまったく別のことを学んでいる。それはユダヤ式交渉術である。