自動車の電動化を急ぐ英政府と少しでも時間を稼ぎたいトヨタの駆け引き

 英国での自動車生産台数は昨年、英ジャガー・ランドローバー(JLR)が22万554台(16年54万4401台)で1位。そのあとは日産自動車20万4522台(同50万7444台)、英ミニ(BMW)の18万6762台(同21万973台)、トヨタの12万4918万台(同18万425台)。ホンダの5万4465台(同13万4146台、昨年7月に生産終了)と続く。

 モデル別ではミニが15万4038台でトップ、トヨタのカローラは12万4918台で2位につける。

 EU強硬離脱を主導した英国の保守党政権は経済の地域格差解消(平準化)を最優先課題に掲げ、EUに先んじて自動車の電動化に取り組むことが地域経済の起爆剤になると意気込む。しかし実際のところ政府の方針に振り回され、英自動車産業は存亡の危機に立たされる。

 トヨタがホンダと同じように工場を閉鎖すれば、地域格差は解消されるどころか拡大するのは必至だ。製造業が衰退すれば、労働者は低賃金のサービス産業に移行せざるを得ない。

 このため、デーリー・テレグラフ紙は「トヨタは(拙速な電動化は)平準化のアジェンダにも影響するとの懸念を英政府に伝えた」と報じている。自動車の電動化を急ぐ英政府と円滑に電動化に移行するため少しでも時間を稼ぎたいトヨタの駆け引きはこれまでにも報道されてきた。

 利益が見込めなければトヨタも苦渋の決断を迫られる。私企業の経済活動は“慈善事業”ではないからだ。これは警告でも脅しでもなく、厳しい現実なのだ。