一帯一路、その特殊性

 上記でみた通り、国営企業が海外で手掛けるインフラ事業は、中国政府の周到な指導の下に進められてきたことから、ともすれば、それは、中国の経済協力の一端をなすと解されがちであるが、それは、以下にみる通り、OECD諸国が進める通常の経済協力とは大きく異なる。

 通常の経済協力であれば、支援対象プロジェクトは両国の援助機関同士の協議を通じて決められるが、一帯一路下の場合、プロジェクトの発掘は、中国の国営企業が自ら行い、当該企業がこれを途上国側に提案し、その合意が得られれば、実施するとする企業主体の経済活動である。

 国営企業の海外事業は、中国では“対外経済合作”と呼ばれているが、それは途上国に対する経済協力事業というよりは、むしろ、外国政府あるいは国際機関からの支払いを受けて行う商業的請負事業である。この点は、中国の統計上も国営企業に拠る海外事業は、“対外支援”とは分類されず、“対外経済合作”として分類されていることからも分かる。

 このように国営企業が海外で行うインフラ開発事業は、あくまでも採算ベースの請負事業であるので、途上国側からの支払いがなければ着手されない。他方、途上国は、通常インフラ工事に必要とされるような多額の資金は持ち合わせていないので、(それが如何に魅力ある提案であっても)発注には出しえない。この点は、国営企業も十分に承知しており、「資金が必要であれば、アレンジしましょう」と申し出、そこで途上国側が「頼む」と言えば、当該国営企業は、すぐさま現地大使館(経済商務処)と連絡を取り、商務部を通じ、中国の国有銀行に話が繋がれ、融資が実現することとなる。

 言い換えれば、一帯一路は、国営企業と国有銀行とが、二人三脚となって進める中国特有の海外インフラ・ビジネスであるといえよう。