利益を生まず巨額の維持費を垂れ流し続ける「ホワイト・エレファント」
【ホワイト・エレファント】:先に述べた通り、国営企業は政府が掲げる「走進去」、「走先去」の下、海外事業の拡大に走ろうとするが、これに熱心なあまり、途上国の債務負担能力とは無関係に出来るだけ大きなプロジェクトを作り上げ、これを途上国に提示し、自己の売り上げを増やそうとすることが多い。
例えば、ラオスのような低所得国に対し、急峻な山岳地帯を突き抜ける高規格の高速鉄道をつくることは(その総延長の6割はトンネルか橋梁にせざるを得ず、途轍もないコストが掛かることは目に見えている)、自己のエンジニアリング能力の高さを誇示するだけの提案であり、ラオスの経済規模からみて(このプロジェクトの総コストはラオスのGDPの4割に達する)、到底正当化されうるものではない。
プロジェクトが完成すればするで、巨額の維持運営費がかかるので、とんでもないホワイト・エレファント(無用の長物)を背負わされてしまうことになる。
【高い借入コスト】:これらの肥大化されたプロジェクトの費用を(当初の提示価格のみならず、正当な理由によるコストアップ部分も含めて)負担させられるのは(中国の国営企業ではなく)工事の発注元である途上国である。
もちろん途上国側もこのような多額の費用を負担させられることは望まず、契約書にサインすることには躊躇するが、もしもそこに(通常は確保が難しい)必要資金をすぐさま貸してくれる銀行があり、また借入金の返済が始まるのも数年先のこととなるのであれば(長期資金の借入には通常5年程度のgrace periodが付く)、ついついこの銀行からお金を借りてしまう。
これら資金の貸し手が、世銀、ADB等であれば、問題はさして大きくないが(世銀、ADBの貸付金利は1%程度。そもそも世銀、ADBがこのような返済の見込みのないプロジェクトにお金を貸してくれる訳はないが)、それが中国の国有銀行の場合は、その貸付金利は高く(譲渡性の高い融資を行うとされる中国輸出入銀行ですら2%台、ましてや、その4倍程度の融資実績を誇る中国開発銀行から借り入れた場合は6%台)、後々多額の返済義務を抱えることになる。