党本部から発せられる指導方針にも変化がみられた。2018年8月に開催された“一帯一路建設工作5周年座談会”において習近平主席は「一帯一路を質の高い発展の方向に変化させる必要性」があると述べ、さらに、2019年4月に開催された第2回「一帯一路国際協力ハイレベルフォーラム」においては、同主席は「国際スタンダード」を尊重することの重要性に言及するとともに、「一帯一路上のプロジェクトは、商業財政上の持続可能性を確保」したものとすべしであると述べた。これを受け、一帯一路案件に対する政府の審査は各段に強化され、その選定はより厳格なものとなった。

 同時に、投資先の分野も、従来からのハードウエア中心から、情報通信技術を始めとするソフトウエアも含めた、より広範なものへと変わっていった。また、情報通信関連技術は民間企業が多くを有することから、一帯一路への民間企業の参入も促された。さらに、一帯一路の支援対象は面的な広がりもみせ、“境外経済貿易合作区”の設置やスマートシティーの建設が打ち出された。これらの面的支援の拡充は、一時的な建設労働者に限らず、より幅の広い分野の要員の海外移転を促すことになり、それは現地での人的ネットワークの強化に繋がり、後々別の機能を果たすことになる。

裏に隠された地政学的な意図

 冒頭、欧米諸国が昨年相次いで一帯一路に対する対抗策を打ち出すこととしたのは、何故なのか、という問いを投げかけたが、もしも、中国政府が、一帯一路の問題点を認識し、これら問題を解決すべく、必要な改革に着手したのであれば、今暫くその推移を見守るべきで、今の段階であえて対決姿勢を打ち出す必要はなかったのではなかろうかとの見方もある。

 にもかかわらず、欧米諸国が、あえて、この段階で、強硬な姿勢を採ることとしたのは、何といっても、一帯一路が途上国で引き起こしている問題が欧米諸国の基本的価値観に抵触し、これ以上看過しえないとみたからであると思われる。

 だが、それだけでは、欧米諸国は、これ程強硬な措置を取らなかったと考えられるが、あえてかかる措置を、しかも、G7諸国が一体となって取ることとしたのは、一帯一路の裏に隠されてた中国の地政学的な意図を見て取ったからであると推測される。

 次回(明日掲載予定)は、この点を掘り下げてみてゆくこととする。

*【後編】はこちら
一帯一路下で整備された途上国の港湾施設は「中国軍事基地」の隠れ蓑
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69647