途上国側も蓋をし続けたい不透明契約
【不透明な契約条項】:中国との契約は、多くの秘密条項を含んでいる。例えば、途上国がデフォルトを起した場合、債務の肩代わりに天然資源の掘削権あるいは不動産開発権を中国企業に譲渡しなければならない、とする条項が含まれていることは稀ではない。
資源の採掘権を外国に明け渡してしまうことには国民の反対が強く、その反対を受けて政府は中国と解約交渉に入らざるを得なくなることが多いが、いざ解約しようとすると、その際に課されるペナルティーの額が非常に高く設定されていたことが分かり、結局は契約解除を諦めざるを得なくなるのだ。
解約とまではいかなくとも、契約の内容が不当であるとして、投資紛争に持ち込むことはできるが、いざ投資紛争に持ち込もうとすると、今度は「仲裁は中国国内で、しかも中国の手続きに従って行わなければならない」とする契約条項が効いてきて、結局は勝ち目はないことが分かり、諦めてしまうことになるのだ。
一帯一路下のプロジェクトにはこのような一方的な内容の契約条項が数多く含まれており、その契約は原則外部秘となっている。
実はこれらの契約を外部秘とすることを望むのは、むしろ途上国側という皮肉な実態もそこにはある。これらの秘密条項が明らかになれば、真っ先に批判されるのはこのような契約にサインした当の政権であるからだ。
【地域社会との軋轢】:一帯一路に係る問題は、このような経済的問題に留まらず、社会的な問題にも及ぶ。プロジェクトが始まれば、多くの雇用機会が生まれると現地から期待されることが多いが、対外経済合作には、対外労務提供も含まれており、現地が期待するほどの雇用を生まないだけではなく、逆に中国から労働者が大挙して入ってくることになる(最近のプロジェクトでは、現地の労働者を使うものが増えてきてはいるが)。
これらの労働者はプロジェクト終了後も(現地での婚約等を通じ)そのまま居着くことがあり、その多くが、現地で小売業を始め、現地の小売業界に少なからぬ影響を与えることがある。
例えば、太平洋諸島の一国であるマーシャル諸島では、小売業の6割が、中国人一世または二世によって運営されていると言われている。一帯一路は、時の政権からは歓迎されるが、一般庶民からは強く反発される所以である。