ロシア軍による虐殺が行われているウクライナ南東部の要衝マリウポリ(3月28日、写真:ロイター/アフロ)

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(英エコノミスト誌 2022年3月26日号)

ウクライナの南部マリウポリでの残虐行為はロシアを勝利に近づけていないが、ほかの都市に広まっているわけでもない。

 地球物理学では、エピセンター(震央)とは、耐えがたい圧力が地震を引き起こした地下の場所(震源)から最も近い地表の地点のことだ。

 戦火に見舞われているウクライナでは、南東部ザポリージャの商業施設「エピセンター」が避難者の集合地点になっている。

 ここザポリージャは、約220キロ離れたマリウポリにロシア軍が加えている耐えがたい圧力から最も近いウクライナ政府の支配地域だ。

エピセンターになだれ込む避難民

 暴力から逃れてきた人々――歩いている人もいれば、車いすの人もいる――の多くは、このショッピングセンターの住所だけを頼りに移動してきた。途中の村まで来るのが精一杯で、ここにたどり着けない人もいる。

 だが、日々2000~5000人が、この急ごしらえの集合地点にやって来る。地震や津波をくぐり抜けた人と同じくらいショックを受けた表情をしている。

 ひょっとしたら、ショックの大きさはそれ以上かもしれない。何しろ彼らが逃れてきた破壊は、突然の天災ではなく、長期間の意図的かつ恐ろしい人間の攻撃なのだ。

 難を逃れた人に出会う前から、新たな車列の到着を感じられる。何日も走り続けた後なのに、燃えさかる都市の煙の匂いが漂ってくるからだ。

 避難者はバスから降りると、まずスープとパンを受け取る。鼻を近づけて香りをかいでから、むさぼるように食べる。

 地元のボランティアから着替えをもらい、ケガの応急処置を受ける。涙をこらえながら友人や親類縁者が逃げ延びてきたかどうか調べるが、こらえきれない時もある。

 そして、自分たちは幸運だと言い続ける。車とガソリンを見つけることができたからだ。

 地下室にまだ閉じ込められているわけでもない。また、一方の手におカネを、他方の手にイコン(聖画像)を持って、車に乗せてほしいと町の外れで懇願するあの老婦人たちとも違う。