ロシアが何より望む制裁解除

 ロシアの要求の大きな柱は、ウクライナの中立宣言、ウクライナの非軍事化、ロシアが2014年に併合したクリミアがロシアの領土であることと、侵攻前から一部地域が親ロ分離独立派に支配されていたドンバス地方が独立していることの正式受諾、そして西側諸国によるロシアへの制裁解除の4項目だ。

 ウクライナはこうした要求の一部に応じる用意があるようだ。

 公の場では、クリミアとドンバスに関する領土の一体性についてはいかなる譲歩も行わないと述べたものの、水面下では異なる打開策を試みるつもりがあるように見える。

 しかし、ウクライナの交渉担当者は、ロシア側に動く意思を感じていない。

 ウクライナのドミトロ・クレバ外相は本誌エコノミストの取材に対し、「(ロシア側は)侵攻当初ほどには自信に満ちていない」と述べた。「だが、大きな問題についてはすべて、(交渉が始まった時と)同じところに留まっている」。

 ロシア側が明らかに望んでいるものがあるとするなら、それは制裁の解除だ。

「10個の文を話すごとに、ロシアの交渉担当者たちは制裁を口にする」とクレバ氏は言う。

「彼らにとって(制裁は)苦痛だ」

 その結果、ウクライナは支援者である西側諸国に、ロシアへの圧力を強めるよう働きかけている。

 ロシア側が語ろうとしないコストは死者数だ。

 北大西洋条約機構(NATO)の推計によると、7000~1万5000人のロシア人が死亡した。死者と負傷者、および捕虜の合計は約4万人に上ると見ている。

 犠牲者数が実際にこの範囲に達しているとするなら、侵攻に最初に参加したロシア兵のほぼ4分の1が戦闘力を失った計算になる。