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(英エコノミスト誌 2022年3月12日号)
間に合わせの武器は侵略者に不快な環境を生み出している。
ウクライナ西部のリビウにあるおしゃれな地ビール工場「プラウダ」が、作業をビールの醸造から火炎瓶の調合に切り換えるのに時間はかからなかった。
ロシアの侵攻を受けた翌日の2月25日には、即席の焼夷弾を作り始めていた。
火炎瓶や鉄ビシを作る地ビール工場
ブリュッセルやミュンヘン、プラハなどの品評会で数々の賞を獲得してきたビールの製造に使われていた機械は今、機械油を6、ガソリンを3、溶媒646と呼ばれる薬品で溶かした発泡スチロールを4の割合で混ぜ合わせ、アルミ粉末をまぶしたものを瓶に詰めている。
出来上がった調合物はスープのようにドロドロしており、粘り気があって恐ろしいほどよく燃える。ロシアの軍用車両に投げつけた時に、有効に動きを封じられる仕組みだ。
自社製の瓶を使い果たしてからは、恥を忍んでコロナやミラーが入っていた空き瓶を使っていると、工場オーナーのユーリ・ザスタフニー氏は冗談を口にした。
プラウダの従業員たちは火炎瓶を調合するだけで満足していない。鉄ビシ(カルトロップ)もこしらえている。
四面体形構造をしていて、頂点のそれぞれにトゲが生えており、どのように地面に落ちてもいずれかのトゲが上を向く。
鉄ビシは古代から「領域拒否」兵器として戦場で使われてきた(古くは紀元前331年、アレクサンドロス大王がガウガメラの戦いでペルシャ軍を破るのに用いたとされる)。
当初は馬で引っ張る二輪戦車や騎兵を倒すことを目的としていた。今では軍用車両のタイヤや兵士のブーツが標的だ。
プラウダのスタッフはコンクリート補強用の「鉄筋」から鉄ビシを作り出している。