真冬でも多くの外国人観光客を集めた赤の広場が再び賑わうことがあるのだろうか

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(英エコノミスト誌 2022年3月5日号)

ロシア市場の大混乱は経済的な「独立独行」が不可能なことを証明している。

 ロシアによるウクライナ侵攻に続き、経済戦争が勃発した。

 西側陣営は過去に例のない制裁を導入した。投資家はできる限り早く、ロシアの資産を処分している。通貨ルーブルの価値は年初来で3分の1も目減りした。

 ロシア政府は近くデフォルト(債務不履行)するかもしれない。

 コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスは、ロシアのインフレ率が遠からず15%に達し、今年の国内総生産(GDP)が5%縮小すると予想している。

混乱した現代史の産物

 ロシア市場の混乱ぶりに不意を突かれた人は少なくない。

 ウラジーミル・プーチン大統領は何年も前から、西側諸国の政府が何をしてきても容易に耐えられるようなロシア経済の防衛体制構築に取り組んでおり、成功したと思われていた。

 資産運用会社ブルーベイ・アセット・マネジメントのティモシー・アッシュ氏が「要塞ロシア」戦略と名付けたものだ。

 ふたを開けてみると、この戦略は失敗だった。「要塞ロシアから瓦礫(がれき)のロシアに1週間で早変わりだ」とアッシュ氏は言う。

 要塞ロシアはこの国の混乱した現代史の産物だった。

 1991年のソビエト連邦崩壊後、インフレ率は2000%を突破した。1998年にはロシアがデフォルトし、ルーブルの価値が3分の1以下に暴落した。

 そして2014年には、原油価格の急落がクリミア半島とドンバス地方での活動に対する国際制裁と重なり、ロシア経済は深刻な不況に陥った。

 フィオナ・ヒル氏とクリフォード・ギャディ氏が2015年刊行の共著『Mr Putin: Operative in the Kremlin(ミスター・プーチン:クレムリンの黒幕)』で示しているように、プーチン氏の悲願はロシアを独立独行させることだった。

 ところが2014年以降、そのイデオロギーは過熱状態になり、二度と西側にロシア経済を支配させてなるものかとプーチン氏が躍起になった。