壁に開いた大きな穴
だが、要塞の壁には大きな穴が開いている。
まず、ロシアは西側の思想や技術のサプライチェーンにしっかり絡め取られている。
長期投資(例えば企業の経営権や新工場の建設など)のストックに関する2国間のデータを本誌エコノミストが分析したところ、ロシア経済は10年前よりも西側への依存度を若干高めている。
ロシアの輸入品の約30%は主要7カ国(G7)からもたらされており、この割合は2014年とほとんど変わらない。
半導体製造やコンピューターなどのように米国製部品に完全に依存している産業もある。
制裁対象になったロシア系銀行のカードは、もうアップルペイやグーグルペイでは使えない。おかげで2月28日には、モスクワの地下鉄で回転式改札を通過できない人が出て混乱した。
それ以上に驚かされたのは、ロシアの金融市場の混乱ぶりだ。
何しろロシアは2022年までに過去最大の6300億ドル(GDPの約40%に相当)もの外貨準備を積み上げ、米ドルから多角化していた。
外国人からの外貨建ての借り入れも、2014年以降は大幅に減らしていた。
だが、ロシアは今も外国人投資家に依存している。
外国人が保有するロシアの短期資産(銀行ローンや株式を含む)の対GDP比は他の新興国のそれとほぼ同じで、2014年以降ずっと安定している。
従って経済制裁が発動されなくとも、投資家が脱出を図る際にはロシアの資産に強大な下落圧力が加わる。