外貨準備も、使えなければ無価値

 おまけにロシアは常に、ルーブル防衛のために外為市場にアクセスできると考えていた。

 確かに、完全に切り離されたわけではない。ロシアのエネルギー輸出は概ね西側の禁止措置を免れたため、いくらかのドルは流入し続ける。

 だが、制裁のせいで、ロシアの外貨準備の65%は事実上無価値になった可能性がある。

 残りの35%は金と中国人民元で、米ドルやユーロの市場でのルーブル防衛には使えない。

 ロシアの困難は時が経つとともに増大の一途をたどるだろう。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除は貿易に打撃を与える。ロシアを後ろ盾にしたSPFSという決済ネットワークもあるが、SWIFTとの差はかなり大きい。

 さらにロシアは輸入代金の3分の1の支払いで米ドルを必要としており、ドルの入手が突然難しくなったことで問題が生じている。

「脱ドル化」が進展している中国からの輸入でさえ、取引の約60%はまだドル建てだ。

神の試練

 問題は、このような状況をプーチン氏が本当に気にかけているか否かだ。

 万一、オリガルヒの一部が思い切って声を荒げたりすれば、彼らを怒らせるようなことはしたくないと思うかもしれない。

 だが、ヒル、ギャディ両氏の著作によれば、プーチン主義の中核にあるのはサバイバリズムであり、経済戦争は自分の力が試される機会だと受け止められる。

 重要なのは痛みだ。

「この物語では、ロシアは生き残るために敵対的な外の世界と常に戦っている」と両氏は言う。

「歴史から得られる最も重要な教訓は、国家としてのロシアが必ず、何らかの形でずっと生き延びてきたということだ」

 ロシアは深刻な不況に直面している。

 だがプーチン氏は折れるどころか、ロシアを外の世界から切り離す試みをさらに強化してくるかもしれない。