プーチンが目指した要塞
要塞ロシアの概念の骨子はこうだった。
まず経済面では、石油・ガスという価格変動の激しいコモディティー中心の経済を多角化させる。西側の技術や貿易への依存度も低下させる。
金融面では、対外債務を削減する。金融・財政政策の両方を引き締め、巨額の外貨準備高を蓄えられるようにする。
外貨準備が豊富にあれば、危機時にルーブルを防衛できるし、ひいきの企業に外貨を流せるからだ。
この戦略はそれなりに成功を収めている。まず経済面から見てみよう。
ロシアの炭化水素への依存度はいくぶん低下している。2019年に石油で得た利益は国内総生産(GDP)の約9%相当で、プーチン氏の大統領就任時の約15%より小さくなった。
オリガルヒ(新興財閥)は今でも並外れた力を持ち、ロシアの富のかなりの部分を支配しているが、その影響力の拡大は止まったように見える。
2000~19年には、生産性の伸びがほとんどのセクターでお粗末なレベルにとどまる一方、ロシアのサービス産業はGDP比で7%拡大した。
一部の分野では、ロシアは西側の技術とは独立した形で動く技術を開発した。
ロシアの決済システム「ミール」は2020年に国内カード決済の25%を占め、5年前のゼロから急拡大を遂げた。
世界銀行のデータからは、「ハイテク」に分類されるロシアの輸入のシェアが急激に縮小していることがうかがえる。
過去10年間で、欧州からロシアへの最新機器の輸出は停滞している。ロシア以外の国や地域への輸出が伸びているのとは対照的だ。