2023年7月17日、ロンドンの国会議事堂広場では、不法移民法案に反対する難民支持のデモが行われた(Vuk Valcic/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 4月22日、イギリス議会は、不法に入国した移民をアフリカのルワンダに移送する法案を可決した。これを受けて、スナク首相は、10〜12週でルワンダへの第一便が離陸すると発表した。この異例とも言える対応の背景には何があるのか。

急増する不法移民

 ルワンダ移送計画は、2022年4月に当時のボリス・ジョンソン政権が考え出したもので、不法移民に対する抑止効果を狙った政策である。英仏海峡を小型ボートで渡る不法移民は、5年前から増え続けている。2018年には約300人だったものが、2022年には約4万5000人になり、2023年も約3万人と高止まりで、2024年も4月21日現在で6265人となっている。

 アフガニスタン、イラン、トルコ、エリトリアなどからの移民が多いという。

2021年11月24日、英国ダンジネスの海岸に上陸する移民たち(新華社/共同通信イメージズ)

 不法移民を収容するにはコストがかかるし、治安の悪化などの問題も生じる。さらに小さな船で移民を試みるため、海難事故で命を失う者も少なくない。

 ジョンソン政権は、ルワンダとの間で協定を結び、移送を行おうとしたが、2022年6月に欧州人権裁判所が差し止めの仮処分を出したために、中止となった。

 また、2023年11月には、イギリス最高裁判所も違法だとの判断を下した。ルワンダ移送後に出身国に強制送還される恐れがあるからであり、それはイギリスも締約国である難民条約に違反するという。

 そこで、政府は、移民を第三国に送還しないことを保証する条約をルワンダと結んだ。その上で、政府は、ルワンダが移民にとって安全な国であることを明記した緊急法案を上程したのである。さらに、人権法の主要部分の適用除外を裁判所に命じ、最高裁の介入を阻止している。

 法案の審議は難航し、上院は5回にわたって法案を差し戻したが、下院は上院の修正案を拒否した。最終的には、「選挙で選ばれた下院の優位を尊重する」として、上院が修正案を取り下げたために、原案通り可決されたのである。