スナク首相が、ルワンダ移送計画の実行を急ぐ最大の理由は、来るべき総選挙対策である。4月16〜17日に「ユーカブ」が実施した世論調査によると、保守党の支持率は21%で、労働党は44%である。この情勢を巻き返すために、国民の懸念事項である移民問題で実績を見せつけようというのである。

アメリカ大統領選の争点に

 アメリカでは、トランプ政権のときに、メキシコとの国境に巨大な壁を作り、不法移民を閉め出そうとした。しかし、バイデン政権になると、この政策は見直され、より寛容な移民対策に移行した。その結果、バイデン政権下で730万人の不法移民が流入したとされる。政治情勢が不安定で、貧困に苦しむ中南米からの移民が多い。最近は中国人の不法移民も増えている。

 そこで、バイデン政権も国境の壁の建設を再開するなど、規制強化に乗り出しているが、国民の不満は高まっている。移民政策は、大統領選での大きな争点となっており、バイデン大統領の支持率を引き下げている。そこで、バイデンも不法移民対策の強化をうたい始めている。

 トランプが再び大統領に選ばれれば、不法移民政策がさらに強化されることが予想される。

 アメリカの人口が若く維持されているのは、移民の流入によるところが大きいし、移民は労働力を提供し、アメリカの繁栄を支えている。そのことをアメリカ国民は認識しているが、不法移民に対しては厳しく対処すべきだと考えている。