村上隆といえば、アニメやオタク文化を扱って人気の、海外で最も有名な日本人アーティストの一人。アニメフィギュア風の彫刻作品が16億円で落札され、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションも話題。しかし、なぜか本人も嘆くほど「世界に比べて、国内では人気がない」。8年ぶりの国内での個展で、その理由を考えた。
(沢田眉香子:編集・著述業)
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「世界のムラカミ」国内8年ぶりの個展は、ふるさと納税で予算不足をカバー
村上隆の個展『村上隆 もののけ 京都』が開幕した2月3日、会場の京都市京セラ美術館には、徹夜組も含めて2000人の行列があった。先着5万名に特製のトレーディングカードが配布されたからだ。カード目当てに問題行動をする転売ヤーもいたとして、SNSで話題になった。
このトレーディングカードは、京都市と協力して行った「ふるさと納税」制度の返礼品として制作されたオリジナルだ。展覧会の制作費が足りなかったため、村上がふるさと納税を提案。開催前日までに支援額3億円を集めた。
美術展の支援にふるさと納税が使われるのは、初の試みだ。村上は開会挨拶で「ホリエモンがロケット事業の資金集めに使っていたのを知って、ふるさと納税制度に挑戦した。日本の文化振興に一番効果があるのは、特別税制だと思っている。これは皆に開かれた、日本国民に了承を得ているシステム。各地の皆さんも、これを使って美術館を存続させることができる。その第一例を作れたことを誇りに思っているし、そこのところを注視してほしい」と語った。
ニューヨークの超一流ギャラリーに所属し、浮き沈みの激しい世界で長年注目されているアーティストが、自作のキャラの帽子を被り、来賓に向かって金策の話とは、村上らしいパフォーマンスだ。村上はこれまで、オタク文化を作品にとりいれ、アート界に違和感をかきたて、タブーだった「アートと金の話」の話を挑発的にし続けてきた。
世界各地で展覧会が引きもきらない村上だが、国内では8年ぶりの個展。そのスケールは圧巻である。
館内の中央ホールには、高さ4mの《阿像》《吽像》が立つ。6.5m幅の大作《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》は、漫画のアシスタント経験のあるスタッフでチームを編成して制作されたといい、彩色、金箔にうかぶ髑髏の模様など、重層的な視覚的刺激に、吸い込まれそうになる(次ページ以降に写真多数)。