(英エコノミスト誌 2024年4月13日号)

もともとゴールド好きの中国人だが、このところ政府も庶民もヒートアップしている(写真は4月9日、連雲港市の金製品販売店で、写真:CFoto/アフロ)

ヒントを出すなら、その答えは「暗号通貨が好き」ではない。

 金(ゴールド)はいつの時代も人々を魅了してきた。

 最古の文明では宝飾品として用いられ、最初の貨幣の形もこの金属から鍛造された。それから何世紀にもわたって、様々な地の王が金に対する欲望を露わにした。

 フランク王国カロリング朝の王シャルルマーニュは、アバール人から大量の金塊を略奪した後に欧州の大半を征服した。

 スペインのフェルナンド2世は1511年に探検隊を新世界に派遣した際、「金を取ってまいれ。できたら思いやりのあるやり方で、しかしあらゆる危険を顧みずに取ってまいれ」と命じている。

 そして1848年、作業員のジェームズ・マーシャルがカリフォルニア州サクラメントで製材所を造っていた時に金の薄片を見つけてからは、一般庶民も金を欲しがるようになった。

輝き増すゴールドに買い殺到

 人々がこの貴金属を、大枚をはたいて買い求める動きが再燃している。

 4月9日にはその価格が1オンス当たり2364ドルに上昇して最高値を更新し、3月初めからの上昇率が15%に達した。

 こうした金の急騰はある程度理にかなっている。災害や経済的苦境に対するヘッジ手段と見なされているからだ。

 戦争が始まったり、景気の先行きが不透明だったり、激しいインフレが進行したりしている時には値上がりすることが多い。

 だが、あくまで「ある程度」までだ。

 結局のところ、今このタイミングで急騰しているのはなぜなのか。インフレなら1年前の方がひどかった。ウクライナの戦争はやや膠着気味だ。

 イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した10月7日以降の1カ月間で、金価格は7%しか上昇していない――言い換えれば、ここ1カ月間の上昇率の半分程度だ。

 さらに言うなら、金に対する投資家の情熱が冷めたように見えたのはつい最近のことだ。

 2022年には、インフレが手に負えなくなっているのに金が値下がりし、インフレのヘッジ手段になるという投資家の考えが大間違いだったことが証明された。

 また、ビットコインに代表される暗号通貨――金の代わりになると見なされることが多い資産――が人気化している。古株の金相場アナリストたちも、最近の上昇相場に当惑している。