衆議院の補欠選挙が4月28日に投開票されます。東京15区、島根1区、長崎3区という3つの選挙区(いずれも定数1)。自民党の裏金事件以後では初の国政選挙とあって全国的な関心を集めています。実はこの選挙には隠れた注目点もあります。それは「1票の格差」。東京は全国で最も1票の価値が低い地域の1つであり、逆に島根や長崎は最も高い地域の1つです。国政選挙のたびに問われる「1票の格差」とは、どういう問題なのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。
そもそも「1票の格差」とは?
1票の格差とは、議員1人あたりの有権者数が選挙区ごとに大きく違うことにより、選挙区によって1票の価値に大きな差が生じる問題のことです。
議員1人あたりの有権者が選挙区内に多ければ多いほど、当選に必要な得票数のラインは上昇し、1票の投票価値は相対的に低くなります。主には大都市部でこの事態が生じます。逆に、地方や過疎地など有権者数が少ない選挙区では、候補者は少ない得票数で当選が可能になります。最多の選挙区と最少の選挙区の差が何倍になるのかを示した数字が1票の格差です。
憲法第14条は「法の下の平等」を掲げていますが、民主主義の根幹である選挙においては都市部と郡部で、すなわち住む場所によって1票の価値が異なっていることになります。誰もが同じ価値の1票を持つという「1人1票」は、実は日本で達成できていないのです。
では、直近の国政選挙ではどの程度の格差が生じたのでしょうか。
2021年10月の衆院選で比較すると、議員1人あたりの有権者数が最も多かったのは東京13区の約48万人でした。最も少ないのは鳥取1区の約23万人。その差は実に2.08倍になりました。
足立区の一部で構成される東京13区と、鳥取市や倉吉市などの鳥取1区を比較すると、東京13区の有権者が持つ1票の価値は鳥取1区の半分しかないということなのです。しかも、1票の価値の格差が2倍を超えた選挙区は29を数えました。
この選挙の直後、関係法令が改正され、衆院選挙区の区割り変更が行われました。いわゆる「10増10減」と呼ばれる施策で、有権者の多い選挙区で議員定数を10増やし、少ない選挙区で10減らします。有権者の多い都市部選出の議員を増やすことによって格差を是正していく狙いです。
実施は次の総選挙からで、このうち、東京都では定数が5増えて合計30となり、新たな小選挙区が5つ誕生します。神奈川県は2増、埼玉、千葉、愛知の3県ではいずれも定数が1増えます。逆に減るのは福島や新潟など10県。定数が1ずつ減り、それに伴って各県で小選挙区が1つずつ消滅します。
長崎県も消滅県の1つ。長崎県には現在4つの選挙区がありますが、再編され、「4区」は消滅。4月28日に投票される「3区」は現在の区割りで最後の投票です。次の総選挙では、現在の3区を構成する大村市や対馬市などが2区に組み込まれ、3区には消滅する4区から佐世保市などが移動する形となるのです。