是正し過ぎると「地方切り捨て」の懸念も
数字的な基準は明示されていませんが、格差が2.30倍だった2009年の衆院選は最高裁で「違憲状態」と判断されました。他方、2.08倍だった2021年の衆院選は「合憲」でした。2.08と2.30の間に合憲・違憲の境があるのでしょうか。
そうではありません。2009年の衆院選ではそれまでの10年間にわたって国会が定数是正をしなかったことを最高裁が問題にして違憲状態と判断し、2021年は国会が大幅な定数是正に動こうとしていたから合憲となったのです。
それでも、大都市圏の有権者には割り切れない思いが残るでしょう。国会が10増10減に向けて動いていたとしても、司法の頂点に立つ最高裁は「都市部の有権者の1票には0.5票の価値しかありませんが、仕方ありません」と宣告したに等しいからです。
しかし、格差の是正を優先し過ぎると、地方の声が国政に反映されにくくなり、「地方切り捨て」がさらに進むかもしれません。政治の恩恵が都市部に集中するようなバランスを欠く日本が本当に望ましいのでしょうか。
1票の格差を考えることは、実は日本のグランドデザインをどうするかというテーマにもつながっているのです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。