衆院島根1区の補選に足を運んだ岸田首相(写真:共同通信社)衆院島根1区の補選に足を運んだ岸田首相(写真:共同通信社)

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 仕事もあり、最近、今後の岸田政権の行く末を占う島根1区に通っております。割と新鮮なんですよ。というのも、本来、私の専門は調査の中でも首都圏の有権者の皆さまの動向を見るものであって、地方での選挙でどっぷりご一緒する機会はそれほど多くはありません。

 そこで、今回は久しぶりに約400人、のべ3000時間以上、島根県民の皆さんのお話を2カ月かけて聞いてきました。

 世界でも有数の大都市圏、東京のど真ん中に住み、先日、親父が亡くなって相続と3人の介護と4人の子どもの面倒を見ている私と、島根に根を張り日々暮らしておられる有権者の皆さんとでは、同じ日本語を話しているのに、着眼点や現実を見るまなざしの角度が違うなあと痛感させられます。

解散総選挙の「条件」となった島根1区

 今回の島根1区での補選は細田博之・前衆院議長の死去に伴うもので、折しもパーティー券ごっつぁん問題という「政治とカネ」の問題が直撃した混乱の中での選挙です。

 それが、にわかに国民全体の関心事となったのは、辞職した議員の補選に、けじめをつけるべき与党・自由民主党が候補者を立てることができなかったという失態があったからです。

 私は、仮に逆風で不利でも、いや不利だからこそ、与党は落ちてもいいから候補をしっかり擁立し、有権者の意見を聞き、反省を率直に述べて堂々と落選して禊とするのが良いと思ったのですが、どうも偉い人たちは「落ちたら責任取らされるので大変」と思ったのかもしれません。でも、不戦敗って流石にしょっぱくないですか。実に。

 3月15日までに辞職した議員の補選は4月28日までに行われます。本来、自民党は長崎3区と東京15区、島根1区に候補者を立て、民意を問うべきでしたが、候補者を立て、与野党対決まで持ち込めたのは、残念なことに島根1区だけです。

 現在、取り沙汰されているのは、勝負師・岸田文雄さんが島根1区で勝ったら解散総選挙に打って出るのではないかという噂です。

 総理大臣の職権をかけ、6月中の通常国会の会期末に野党からの不信任案という売られた喧嘩を買う形で解散総選挙に踏み切るという話です。その場合、7月28日投開票(一説には7月14日)になるかもしれないと言われています。

 この大博打の条件として、「島根1区で与党陣営が勝利した場合」というハードルがなんとなくついているのは実にアレじゃないかとは思うんですが、実際そういう話になっているのだから私から申し上げられることは何もありません。

 しかしながら、大都会・東京の真ん中で、日本最強の権力者である岸田文雄さんが解散するしないの試金石となるのが、この慎ましい田舎の、落ち着いた有権者たちが住まう島根1区というのは何とも対照的です。私らも、すっごい危機感を持って有権者の皆さんと向き合うんですがね。

 のんびりしてるんですよ、島根県民。