市街戦で効果発揮
この発明の才がもたらした間に合わせの武器の中には、実際、恐ろしく強力なものもある。
例えば擲弾(てきだん)発射筒が必要になったら、どうするか。
散弾銃の銃身の先に鉄製のコップを固定する。そして通常の手榴弾(しゅりゅうだん)のピンを抜き、コップの中に押し込む。
手榴弾のレバーが固定されたままにするためだ。最後に、小弾丸を取り除いた薬莢(やっきょう)を銃に装着する。
引き金を引くと手榴弾とコップがそろって打ち出され、手榴弾がコップから飛び出す。その弾みで手榴弾のレバーが解放され、爆発へのカウントダウンが始まる。
安全に発射できる仕掛けだとはとても言えないが、うまく機能する。サッカー場の端から端まで届くほどの射程距離があるからだ。
オーストラリアのパースにあるコンサルティング会社アーマメント・リサーチ・サービシズのニック・ジェンセンジョーンズ代表によれば、ウクライナではこの仕掛けが急速に広まっている。
おびただしい数の火炎瓶について言えば、ウクライナの優れた「バーテンダー」たちがいろいろなレシピやデザインを試している。
ビンの中に仕切りを設けて二段式にし、一方のスペースに灯油を、もう一方のスペースに自家製ナパームを仕込んだものもある。
火炎瓶は単なる手投げ兵器ではない。
キエフにいるウクライナ陸軍大佐(本人の希望で名は伏せる)は、火炎瓶を投げるクロスボウの写真を見せてくれた。スクラップの鉄と、ベッドのスプリングで作った発射装置だ。
そのような即席の発射機があってもなくても、火炎瓶は市街戦で極めて有効な武器になり得る。
特に、建物の上層階から放り投げたビンが届く範囲については、侵入者に通過をためらわせることができる。
相手の動きを抑制することにもなるし、火炎瓶に気を取られた兵士がほかの方向からの攻撃に弱くなる。