ソ連時代に培われた創意工夫の文化的遺産
バリケードが必要な市街に急いで配備する時には、鉄ビシを鎖に溶接することもできる。リビウのほかの地区では、別の種類のバリケードも用意されている。
ヘッジホッグ(ハリネズミ鹿砦)と呼ばれる対戦車装置で、頂点が6個あり、余った鉄道レールから作られている。
装置は子供向けのゲーム「ジャックス」の駒の巨大バージョンのように見える。まとめて置いておけば戦車を止めることができ、男女が火炎瓶で攻撃する隙が生まれる。
こうした作業に取り組んでいるのは、リビウの工房だけではない。この種の防御物は今、ウクライナ全土で大量に作られている。
鉄筋が手に入らない場合は、鉄釘を曲げたり溶接したりして鉄ビシを作っている。分厚いゴムシート一面に釘を刺した装置も歩兵を躊躇させる。
ウクライナには、限られた資源で物事を成し遂げることに慣れたエンジニアやコンピュータープログラマー、その他の特殊技術の持ち主が多数いる。
リビウ選出の若い国会議員で、ロシア軍と戦うために首都キエフにいるスビアトスラフ・ユラシュ氏は、こうした創意工夫はウクライナ特有の文化的遺産の賜物だと話す。
ソビエト連邦の支配の「官僚的な大混乱」のために、人々は創造的な解決策を編み出すようになった。それが独立後の30年間における市場志向の改革の土台になった。
そのおかげで、「今まさに役に立つ」起業家精神に満ちた活気がもたらされたとユラシュ氏は言う。
同じくキエフで戦っている映画プロデューサーのウラジーミル・ヤトセンコ氏は、この創意工夫に富んだ気概を「我が国のDARPA」と形容している。
米国にある著名な軍事技術研究所、国防高等研究計画局(DARPA)のことだ。