完全に包囲された要衝

 かつて40万人が暮らしていたマリウポリは、戦争が始まった最初の週にクリミア半島やドンバス地方から侵攻してきたロシア軍に取り囲まれた。

 それ以降、ロシア軍が周辺に野営地を設けた他の都市よりもはるかに激しい攻撃に見舞われてきた。

 一つの理由は、マリウポリが戦略上の要衝であるためだ――ドンバス地方とクリミア半島を陸路でつなぐうえで欠かせない。

 もう一つの理由は、ウクライナ北部にあるハリコフやキエフと異なり、完全に包囲されているからだ。

 首都キエフに近づいたロシア軍はここ2週間、足止めされている。ウクライナの国会議員キラ・ルディク氏によれば、首都は「ウクライナで最もしっかり守られている場所」だ。

 ここにはもう、キエフを制圧・占領するのに必要な戦闘力がロシア軍にあると思っている人は一人もいない。

 ウクライナの部隊が侵略者を押し戻したと伝えられる地域さえある。ただ、少なくともそうした報道の一部は正確ではなかった。

 首都から西に50キロ離れたマカリフという町では、ウクライナ当局が、ロシア軍が「撃退された」と発表した。筆者がその地を訪れようとした時、目にしたのは異なる状況だ。

 激烈な戦闘のために町に入るのは不可能だった。町長は、ロシア軍は2月末にこの町の15%を手に入れ、それ以降は前進も後退もしていないと話している。

持ちこたえる首都キエフ

 しかし、キエフの中心部では、暮らしが上向いている。

 ガソリンの配給制はすでに解かれ、主な道路の交通量は侵攻が始まった2月24日以降のどの時点よりも多い。スーパーの棚には再びパンが並び、ほかの地方と首都を結ぶ鉄道も動いている。

 だが、戦争の気配や音、恐怖は消えていない。3月14日頃からは毎日数発のミサイルが飛んできており、北西部が特に激しい被害を受けている。

 3月20日の深夜には、トレーニングジムやショッピングセンター、オフィスなどが入った建物にロシアのミサイル1発が命中し、その周囲数百メートルにがれきの雨を降らせた。

 ロシア国防省は、ジムの地下駐車場にウクライナ軍のロケット発射装置が隠されていたと述べ、その主張を裏付ける動画を公表した。

 もし事実であれば、爆撃でロケットに点火したことで爆発の激しさに説明がつくかもしれない。