6.ウクライナとNATOはどう対応すべきか

 ロシア軍により化学兵器が使用されたならば、化学剤に触れて死亡する人々、呼吸困難になって倒れる人々の映像が、全世界に瞬時にして伝えられる。

 その悲惨さは、世界の多くの人々の目に焼き付けられることになる。

 求められるのは、被害者を迅速に治療することだが、実際に化学攻撃が行われたのか、どんな化学剤が使用されたのか、どの国が使用したのか、その証拠を集めるなどの調査を迅速にしなければならない。

 使用した国、使用するのはロシアしかないのだが、その証拠を明確にして、国連など全世界に知らしめることが必要だ。

 調査は、第三者機関である化学兵器禁止機関(OPCW)の専門家の投入が必要だ。調査には、専門の調査車両、防護服、検知器などが必要になる。

 戦場にOPCWを入れるには、NATO軍の支援が必要になる。特に、OPCWを空からの攻撃から守る防空兵器も同時に投入することが必要になる。

筆者が防護服を着用して本物の化学剤を検知している様子と検知器

 被害を受けた人々を救助するためには、ウクライナの病院だけでは、救急治療が不足するかもしれない。

 NATOは、どうするのか。調査、救助活動のために、NATO軍の一部を入れる必要が出てくる。ウクライナに入ったNATO軍の一部を守る警備兵や防空兵器も同時に入れることになる。

 化学兵器を使用したロシア軍に対しては、少なくとも使用した部隊を攻撃しなければ、NATOは弱腰として批判もされるだろう。

 NATO軍をどこまで投入するのか、極めて難しい判断を迫られることになる。