5.化学兵器を使用時の「偽旗作戦」
ホワイトハウスのサキ報道官は3月9日、ロシアがウクライナで化学兵器を使用、または、攻撃を自作自演する「偽旗作戦」に使用する可能性を指摘。
米国がウクライナで化学兵器を開発中だとするロシアの主張を虚偽と退け、「ロシアがこうした虚偽の主張を展開し、中国もこのプロパガンダを支持しているように見える以上、われわれはロシアが化学兵器や生物兵器をウクライナで使用する可能性や、それらを使った偽旗作戦を警戒する必要がある」とツイートした。
ロシア軍が化学兵器を使用した場合、偽旗作戦の要領と狙いには、次のようなものがある。
サリンの液体は、透明の気体になって拡散していく
サリンやマスタードは、無色であり、「煙が漂う」ことはない。「砲弾から勢いよくガスが出る」こともない。
このような写真や映像が放映されれば嘘である。
サリンの液体は、静かに揮発するので、揮発の状況は目で見えない。だから、使用された場合、見た人、撮影している人は、すぐに死んでしまう。
サリンの攻撃は無色・無臭で見えない

人々が倒れていくのを見たという話は信用できるが、化学弾が破裂したのを見たと言う人は信用できない。
発煙弾(はつえんだん)を化学剤のように見せかけ脅す
発煙弾だけを使用するのは、人々に煙を見せて混乱させる狙いがある時だ。
報道で、煙がモクモクと出ている写真があるが、これは化学攻撃ではない。火砲の射撃などによる煙弾(煙幕)攻撃だ。
3月24日に白燐発煙弾(陸自も黄燐発煙弾を所有している)が撃ち込まれたが、発煙弾には、煙と焼夷効果があるが、コンクリートの建物に隠れるか、煙から逃れれば、殺傷効果はそれほどでもない。
ただ、発煙弾をなぜ今使用したのかを分析すると、これは化学弾使用の予兆であるとも考えられる。
ロシア軍は、発煙弾と化学弾を同時に使用して、化学弾の痕跡を隠すことを考えているのかもしれない。
同じ形の発煙弾と化学弾を同時に使えば、特に弾薬のロット番号(砲弾固有の番号)を削って消していれば、使用の痕跡を隠しやすい。
左:発煙弾の射撃効果、右:発煙弾と化学弾射撃(イメージ)

とはいえ、サリンでも、マスタードでも、土にその剤が残るので、化学剤が使用されたことは判明できる。だが、誰が使用したのかという証拠にはならない。