こうしたことを実現する技術の蓄積は電気自動車を作る際にも使えるし、電動を利用する他のあらゆる製品に応用できる。

 まだ、形が定まっていないものについて、最大限の効率や有用性を実現できるかについて、考えるのも良い経験になるはずだ。

 もちろん、MaaS革命なる妄想を膨らませるようでは話にならないが、空飛ぶクルマの現実を理解したうえで開発をするのなら人材育成の面から有用ではないかと思う。

 空飛ぶクルマが普及した場合は、開発の努力は大きく花開くことになろうが、仮に空飛ぶクルマという乗り物が普及しなかったとしても、開発の経験は大きな資産となろう。

 固定翼機やヘリコプターの分野はすでに形が定まってしまっているもので、日本が後追いでやろうとすると三菱スペースジェットのような苦労をすることになる。

 一方、空飛ぶクルマはまだ形が定まっていない。これは日本が食い込みやすいということでもある。

 現実的な空飛ぶクルマの実用化を目指した、本気の開発は応援したいところである。

テトラ・アビエーションへの期待

 テトラ・アビエーションが現在開発したモデルは、GoFlyで勝てる機体であり、それに特化している。言い換えれば、実用にすぐつながるものではなかった。

GoFlyで賞金を獲得したテトラ・アビエーション製空飛ぶクルマの飛行風景(テトラ・アビエーション提供)

 しかし、同社は2021年にレジャー用途で数千万円程度の価格で、米国で予約販売を開始する計画を持っている。現在、そのためのモデルが開発中である。

 もちろん、述べてきたような懸念点は理解されて開発をされている。来年の米国のオシュコシュエアショーで発表されるそうだ(ちなみにオシュコシュエアショーは航空機開発者最大の祭典のようなイベントである)。

 現状の空を飛ぶものの宿命として、型式証明の取得や販売は米国の方がはるかにやりやすい。