問題はそのようなものを、地球に持ってくることができるかということである。

 宇宙にまで回収に行きたくなるような量のプラチナを含む小惑星の重量は、膨大なものとなる。

 はやぶさ2の費用は約300億円。2008年10月現在、1グラムのプラチナはだいたい3000円程度。

 300億円分のプラチナは10トンになる。M型小惑星が1トンあたり10グラムのプラチナを含むとすると、10トンのプラチナを得るには100万トンの質量のM型小惑星を見つけなければならない。

 100万トンの質量のものを地球に持ち帰ることは不可能である。それどころか、その100分の1の量でも難しい。

 それを示す実例がある。2013年、ロシアにチェリャビンスク隕石が落下した。落下時、隕石が燃えながら落下する様子とともに、隕石の大気圏突入により発生した衝撃波が地上に損害をもたらし、建物を破壊したことが報道された。

 チェリャビンスク隕石は空中で爆発し、粉々になって降り注いだが、もともとは1万トンあったと推定されている。

 その1万トンの隕石が大気圏に突入し、落下してきた時に発生させたエネルギーは、TNT火薬換算で約500キロトンあったという。

 小型水爆並みの破壊力であり、広島型原爆25発分の威力である。

 はるか上空で爆発したのだが、周囲では建物を破壊し、ガラスを割り、多数のけが人が出るような破壊力が地上にまで及んだ。