もちろん、はやぶさ2は科学的観測を目的とし、限界まで小惑星のサンプルを持ってくる仕様とはなっていない。オシリスレックスも資源回収を目的としたものではない。

 資源回収を目的に回収量を最大にすれば、多少は、回収見込みが増えるだろう。

 しかし、かかる費用と回収できるサンプルの量が、プラチナを回収した際にペイする量と全く合っていない。

 数十パーセントコストダウンをすれば成り立つという世界ではない。回収量あたりコストを見る限り、最低でも何十万分の1というあり得ないコストダウンが必要になる。

 小惑星からプラチナを持ち帰りペイすることなど到底不可能であることは明らかである。月よりも遠い場所まで採掘に行ってもペイするような高価な金属など、そもそも存在しないのが現実だろう。

スペースマイニング実現のための未来技術

 スペースマイニングが実現しそうにない根本原因は、現在のロケットがあまりに低効率・高コストだからである。

 化学反応を利用したロケットは、物理的に大量になる燃料が必要である。この大量の燃料は燃料を運ぶための燃料と、燃料を運ぶための大きなタンクを必要とし、コストアップの悪循環を生む。

 地球の重力圏外への飛行において、すでに化学反応を利用するロケットでは限界が見えている。

 スペースマイニングとまでいかなくても、火星やそれより遠い天体への有人探査では、より効率のよいロケットが必要とされる。これまでも、そうしたことが構想されてきた。

 中には実用化されたものもある。はやぶさ、はやぶさ2は、燃費の良いイオンロケットによる長期間の加速が可能になったことで実現した。